日曜日の朝

毎週日曜日朝8時30分ごろ更新。役に立つことは書けません。

これは夏に届くフライパンであろう。夏まで生きていようと思った。

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煮物が煮えていって台所があたたかいにおいになるのが好きだ。
自分がつくっていきたい家庭はこういうものだと実感する。
 
夏に土鍋をいただいた。
土鍋でご飯を炊いている知り合いがいて、その様子がすごくよかったのでやってみたかった。検索しながらおっかなびっくり目留めをして、何度もふたを開けながらおっかなびっくり炊いてみる。
炊飯器とは全然違う炊きあがり。色・つや・味、どれをとっても昨日までと同じ米とは思えない。毎月買っている5kg1,700円の米のポテンシャルを見直して以来、米は土鍋で炊くようになった。晩ご飯だけだけど。
炊けた熱い土鍋をふきんで掴んで食卓に持って行き、蒸らす間に味噌汁をつくる。そうこうしているうちに大河さんがお風呂から出てきてご飯をしゃもじで混ぜてくれる。「今日の炊き加減最高だよ、おいしそうだねえ」というにこにこな報告を聞きながら台所で味噌汁をよそう。「紗季さんご飯どのくらい?」「小盛りで。ありがとう」なんて言いながら台所ではお盆が整っていく。
よりあたたかいものを食べてほしいから、配膳はいつも忙しい。その忙しさを乗り越えてふたりで向き合い、湯気越しに手を合わせる時間は何物にも代えがたい。ああ、いい暮らしをしているなあ、と感じる瞬間だ。
 
土鍋は小ぶりで2合炊くのにちょうどいい。逆に言えば煮物などおかずをつくるには少し小さい。
わが家のふたりはメインのおかずがたくさんあると嬉しいタイプ。例えば肉じゃがはじゃがいも2~3個、にんじん1本、玉ねぎ1個、白滝100g、豚肉は300g以上でつくる。2合炊きの土鍋ではさすがにふたが閉まらないし、混ぜられない。単純に量を減らせばいい話なのだけど、おいしいものはたくさん食べたい。うっすら健康も気にしており、お米をたくさん食べるよりおかずたくさんの方が栄養的にいいよね~とも思っている。正しい考え方かは自信ない。間違ってはないと思う。
いずれにせよ大根を炊こうとして4切れしか入れられないのは悲しい。鶏肉だって一緒に炊きたい。鶏胸肉を土鍋で煮ると「これ魚? でも味はお肉だよね?」と聞かれるほどやわらかく仕上がるのだ。どうしてこんなに味がしみてやわらかいのか、土鍋だからか。
ああ土鍋でつくったカレーやシチューも食べてみたいなあ。山盛りの肉じゃがも食べたいなあ。
 
そういうわけでおかず用の大きい土鍋を買うことにした。年内に注文したい、と秋ごろうっすら思って2ヶ月放っておいた。その間土鍋の中にはご飯を中心に肉魚野菜が遠慮なくつっこまれた。でも量が全然足りない。汁気の多いものは吹きこぼれてしまうので危険もある。
吹きこぼれというと東野圭吾の『白夜行』を思い出す。映画版が好きで、堀北真希さんが繰り出す搦め手に何度怯えたかわからない。このときの堀北さんはずば抜けて美人だったなあ。もちろんいつでも美人だけど。
堀北真希さん演じる雪穂さんは深い闇の中で、受けた傷や痛みを清算しながら一筋の光をたどっている。でも過去を清算するには他者の傷や痛みを代償にするしかない、その生き方しか知らない。自分がそうされてきたから。目的をもって破滅に突き進んでいくような、やるせなく、まぎれもない絆の話だ。
「絆」と言えば何年か前に「絆という字は馬につける鎖を意味する」とネットで読んだ。今年の一文字で選出されたときだったか。『白夜行』を読むと辞書の意味と由来を交互に思い出す。決して「いい話」ではないけどどうしても心惹かれてしまう。どうしてこうなっても生きていこうとするのだろうか。
 
完全に脱線してしまった。土鍋の話。
土鍋探しはかなりスムーズに終わった。鉄のフライパンを探したときは1週間くらい検索しまくったのに(5月末に届く予定。待ち遠しい)。
選んだのは馬場勝文さんのスープポット・大。
こんなにキュートなフォルムで2Lも入る。今の土鍋の倍。白もあってそちらもかなりかわいい。
色は相当悩み、どこか近くの卸先で実物を見られないかと何件か問い合わせもした(大河さんがたくさん電話してくれた。めちゃありがとう)。
結局実物は見られなかったけど黒にした。わが家の台所は年季が入っており、黒の方がよくなじみそうだった。白もよかったんだけど、ちょっと明るくかわいくなりすぎてしまいそうだった。台所は落ち着いている方が好き。家電は白でまとめてる。
 
馬場さんの作品で最初に見つけた1~2人用の土鍋もめちゃめちゃキュート。取っ手のちょこん感と底の丸みよ。これの大きいサイズがあれば、と探してスープポットを見つけた。
今使っているいただきものの土鍋が割れたりしたらこれを買おうかな。
 
馬場さんは人気の作家さんのようで、2年待ちのアイテムもあるらしい。鉄のフライパンを探しているときに5年待ちのものがあったのでそれに比べればいくらか早い。でも2年。あと1年で中学生が卒業すると思うとなかなかの時間だ。
スープポットはたまたま卸先に在庫があってすぐ注文できた。今日の午後に届く予定。ああ楽しみだ、目留めに使うお米はどれだけの量になるんだろう。きっと何日もおかゆを食べることになるんだろうなあ。目留めが終わったら何をつくろう。シチューでもつくろうかな。カレーもいいなあ。
 
新しい調理器具を買うとどうしてもわくわくする。
子どものころは新しいゲームに、次は本や漫画に、学生になったら服や化粧品に心躍った。
今までは自分のための娯楽にお金や時間を使っていた。大人になって人と過ごす時間のためにお金や時間を使えるようになった。調理器具はその最たるものだと思う。ああ、いい変化をしたなあと感じる瞬間だ。
土鍋の感想はまたそのうち。「またそのうち」と書いたものは基本書かないジンクスがある。メモして満足しちゃうのかも、僕の悪い癖。
 
おしまい